これまでこのサイトでテストを行なってきたPC用パーツたち、今のメインはZen2アーキテクチャを採用したRyzen 5 3500になっています。
今まではPCケースのサイズ感はあまり意識せず、結果的にボリュームが大きなマシンが仕上がるような形になっていました。
今回はこのシリーズで初めて小型マシンに挑戦します。
マザーボードをMini-ITXのものにスイッチしてケースも小型の物をチョイス。著者自身、Mini-ITXのマザーボードの実物をいじるのは初めての機会になりますので、とても楽しみにしていました。
使用したパーツ
まずは今回使用したパーツの紹介から。
- ケース:Cooler Master MASTERBOX NR200P ホワイト 13,508円
- 電源:CORSAIR SF450 11,556円
- マザーボード:ASRock B550M-ITX/ac 16,687円
それぞれAmazonにて購入しています。
マザーボードの交換はもちろんですがケースもそれを活かした小型の物に。さらにマザーボード、ケースがMini-ITX対応と言うことで、電源の方もSFX規格準拠の物を必然的に選ぶことになりました。
ケースは安心のCooler Master製で、小型ながら十分な拡張性と冷却性能を備えたMASTERBOX NR200Pを選択しました。

電源はこちらも安心のCORSAIR製Gold電源。使っているパーツの関係から450Wのもので十分に余裕があります。

マザーボードはこの機会にB450チップセットからB550チップセットにスイッチしました。

B450チップセットからB550へ
前の節でも書きましたが今回のパーツ交換にあたり、マザーボードはB450チップセットベースの物からB550チップセットの物にスイッチしています。

これはCPUのRyzen 5 3500がZen2アーキテクチャでPCIeインタフェースがバージョン4対応となっているのに、B450チップセットのままだとそれが活かせないためです。B550チップセットならばCPUから引き出したPCIeは4.0規格の接続が可能になります。
ただし、現時点では使用している周辺機器側、SSDとビデオカードがPCIe3.0対応の製品であるため、インタフェース側の本来の性能を引き出すことは出来ません。将来のためのポテンシャル確保、ということになりますね。
マザーボードのサイズが大幅に小さくなるため、その分拡張性は下がります。

メインメモリはDDR4メモリ2本、PCIeスロットはx16形状のものが1スロットのみの対応です。
ただし、バックパネルに出ているインタフェースはそれなりに豊富ですし、フロントパネル向けのUSBピンヘッダなども最低限の物は備えており、SATA3ポートも通常十分な数があります。
よほどのハイエンドユーザーでない限りこれぐらいのスペックで十分な気もします。
何よりマザボの小ささには驚きましたし、その小ささが実現してくれるコンパクトなマシン本体のサイズ感にはすごく大きなメリットがあると感じます。
設置面積と、やはり「圧迫感」が段違いですよ。
小さいけれど拡張性も冷却も余裕のケース
さてケースの方ですが、Cooler Masterでは中堅クラスとなるシリーズにあたると思います。MASTERBOXブランドを名乗る製品です。

格安マシンを組むにはちょっと予算に響く価格帯ですが、その分、ケースの作り自体は素晴らしいことを実際に組み立てを行なう中で実感しました。
一番、感心したのはサイドパネルとトップパネルの扱いの容易さです。どちらもネジ不要の作り。簡単に取り外し・取り付けが出来、しかもカッチリと止まります。
ロック部分は恐らく樹脂製のボールジョイントのような部品になっていますので、ものすごく多くの回数付け外しをするといつかは立て付けが甘くなるかもしれません。

が、普通はそんなことはしませんよね。それよりも組み立ての際の楽さの方がずっと大きなメリットになるはずです。
ケースのサイズ自体が小さなMini-ITX対応ケースですから、内部にアクセスしやすくなるようすべてのパネルを簡単に外せるのはとても実用的なフィーチャーだと思います。

今回はやっていませんが、必要ならばさらにケースの骨組みの一部も外してさらに開放性を上げることも出来ます。ケースが小さいことが組み立ての際のハンデには一切ならないとても優れた設計だと思いました。
むしろ今まで著者が扱ったどの大型ケースよりもパーツ組み込みは楽だったかもしれません。
ケースは特に高さが低く奥行きも控えめなサイズ感で、それがボリューム感を小さく抑えてくれています。これに対して厚みは結構あるディメンションなので、拡張性と内部のエアフローの良さには十分に期待が持てそうな形です。
サイドパネルも標準だとメッシュタイプ。トップパネルもより通気が良さそうなメッシュ構造になっていますから、冷却性能は小型ケースとはいえ一切犠牲にしていない感じです。
そこそこの価格なこともあり、静音タイプの12cmファンが標準で2つついてくるのも地味にうれしいところです。
あと、一式組み上げてから気づきましたが、今回は手先にどこも切り傷がありませんでした。
価格が安く仕上げが甘いケースは基本金属部品の多くにバリが残っていて、気づかないうちに小さな切り傷が出来がちです。そういったことがないのは、この製品が細かいところまでしっかり作り込まれている証なのだと思います。
小さいけれど静かなゴールド電源
SFX電源を扱うのも初めてだった訳ですが、パッケージを開けて電源本体を取り出したときに思わず「ちっちゃ!」と声を上げてしまうぐらいにコンパクトなサイズ感。正直驚きました。このサイズで姉妹製品は600W対応のものもあるようですので、そちらにも驚きです。
体積的にはATX電源の半分以下なんじゃないでしょうか。

その分、ファンは8cmのものが使われていると思われますので、ちょっとそちらの風切り音がどうなるのか不安になりました。
が、実際にはケースとの兼ね合いもあるとは思いますが、電源の出す音はほぼ気になりません。
また、この電源はフルモジュラーケーブルの構成を採用しているのですが、ケースが小さいものになりがちなMini-ITXにこそこのフィーチャーは非常に重要だと思います。
電源の設置場所、設置方法にもよりますが、余分なケーブルはケース内のエアフローを邪魔する効果しかありませんので、不要なケーブルの存在自体を消せるフルモジュラーはSFX電源にこそ必須なスペックと言えるかも。
ただ、この電源では同梱のケーブルがかなり堅く上手くまとめにくいのは、ちょっと残念な部分かもしれません。
使用感
今回Mini-ITXベースで組み上げたマシンのパーツは以下のようになっています。
- CPU Ryzen 5 3500
- メモリ DDR4-2400 4GBx2
- SSD PCIe3.0接続NVMeタイプ
- チップセット B550
- ビデオカード Radeon RX570
ビデオカードが数世代前の物で古いと言えば古いのですが、性能的には最新の激重ゲームや、グラフィックがキレイな3Dモノを超高解像度で動かさない限りほぼ問題のない性能を持っています。
こういったすごく実用性の高い中身が容積18リットルのコンパクトな筐体に収ってしまう訳で、一般的なパソコンとしてこれ以上のものが必要かしら?そんな風に思ってしまうぐらいの機能が実現できます。

電源が450Wのままでも8コアCPUと、消費電力200W弱までの今時点のミドルハイクラスのビデオカードが載せられるのではないかと思います。
結構ハイスペックなゲームでも十分に対応可能そうに思います。
もう、大きなケース、大きなマザーボードを必要とするのは、大量のストレージを必要とする用途ぐらいになっていくのかもしれません。
エアフローを重視したかなり通気の良いケースで、内部のパーツ設置の関係から2つのケースファンをトッププレートに設置したのですが、PCの動作音自体は極めて静かです。
さほど消費電力が大きくないパーツをチョイスしているせいもあると思いますが、十分な冷却性能と静音性が両立できています。
また、マザーボードのUEFIのCPUファンコントロールのチューニングが変わっているのだと思われますが、動作時のCPUファン音が一気に静かになりました。
更新前に使っていたものもASRockのB450チップセット採用の製品なのですが、簡単にCPUファンの回転数が最高速に近いところまで上がってしまって再起動時などに結構な音を立てていました。
それが大幅に改善されています。起動時もファン音があまり気にならなくなりました。
ただ、その代わりCPUに高負荷をかけた際にはCPUコア温度はやや高めで負荷がなくなった際の温度低下も遅めではあります。
ここは背反する部分なのでどちらを取るか、と言う問題ではあります。
一通りベンチマークも
一応、簡単に一通り定番ベンチマークも実行してみましょう。
CINEBENCH R20
まずは純粋なCPU性能を見るCINEBENCHから。
1スレッド実行では466pts。

6スレッド実行で2559ptsとなりました。

どちらも前回のテストから1~2%程度数値が向上しています。実行回数が少ないため有意な差、と言えるかどうか微妙なところです。ただ、熟成が進んでいるはずのB450マザボからB550に乗り換えても、しっかりとCPU性能を出し切れていそう、というのは見えてきます。
また、今回はWindows 10にはAMD独自のCPUドライバを導入していませんが性能の落ち込みはなく、Windows側のRyzenシリーズへの対応がキチンと進んでいることも確認できます。
CrystalDiskMark
まず内蔵ストレージの性能から。
CrystalDiskMarkで測定したSSDのデータがこちらです。

概ねB450チップセットのマザーボードで測定を行なったときと同等の数値です。
1キュー時の測定データが結構向上しているのですが、ここの理由はちょっと不明。ただ、性能が落ち込んでいる訳ではありませんし、元々一般的な利用には十分すぎるぐらいの性能がありましたので、あまり気にする必要はないでしょう。
ドラクエXベンチ
こちらは今のCPU、GPUを巡る状況だと、CPUに統合されているGPUの能力を見るテストと考えた方がいいのかもしれません。ですが、一応、データ取ってみました。

フルHD、高画質の条件で、ほとんどスコアが振り切る状況ですね。全く問題のない数字です。
3DMark
続いて3DMarkのTimeSpy。

こちらも以前ベンチマークを実行したときとほとんど同レベルの数値です。違いは誤差の範囲と言っていいでしょう。新しいプラットフォームでもしっかり性能が出切っていると言えると思います
まとめ
著者はそれほど深いところまで踏み込んだタイプの自作機ユーザーではありませんが、それでも一通りのことはいろいろ試してみていると思います。ですがMini-ITXベースで組む今の小型マシンを、どこかちょっとなめていたのかもしれません。
なんというか今回1台まとめてみたら、普通は、というよりPCユーザーの8割とかそれ以上の大多数は、このクラスのマシンで十分以上なのではないか、と感じました。
マザーボードのサイズが小さい分、確かにATXやmATXのマザーボードと比較すると拡張性は落ちます。ですが、より大きなフォームファクタのマザーボードがサポートできるような多数のデバイスを必要とするユーザーって実際どのぐらいいるのか、ですね。
たくさんのHDDを搭載するとか、マルチGPUで究極のグラフィック性能を目指すとか、動画編集などで超々高速なSSDが必要だとか、かなり限られた使い途を必要とするユーザー以外はもう十分と言えるスペックを実現できていると思うのです。
パーツ代がやや高めになってしまいますが、その分、コンパクトにマシンをまとめることが出来ます。
少し予算を上乗せすれば今回使ったような、サイズの割に拡張性もありパーツの組み込みも容易、さらに見た目も美しいコンパクトなケースも利用できます。

デスク「トップ」パソコンの名前の通り、机の上に設置するパソコンならばこちらの方が間違いなくフィットします。ミドルタワーのケースを使ったなら、どちらかと言えばデスクトップではなく、デスク「サイド」パソコンになりますしね。
普通の使い方をするユーザーであれば、自作マシンの選択肢の第一候補にMini-ITXを挙げてもいいぐらいかもしれません。