はじめに
ここまでにお手頃価格のパーツの色々な組み合わせで実用性や実性能を見てきました。今は、AMDのエントリークラスのCPUであるRyzen 3 3200Gをじっくり堪能しています。
まずはCPU単体でCPU自体の性能や統合されているGPUの能力をザッとチェックしてみました。
CPU性能は通常の使い方には十分以上。統合GPUのほうも一般的な使い方では全く問題がなくて、さらに3DモノでもドラクエXぐらいの描画負荷のゲームであれば十分に遊べることもチェックできています。
ですが、このCPU単体で出来るゲームはそのあたりまで。3DMarkなんかのベンチマークを動かすとすぐに分りますが、より本格的な3D描画を行なうゲームになると途端に力不足があらわになります。
そこでこれまでのトライの中で購入済みだった独立GPU、Radeon RX570を追加してその性能を見てみることにします。
このGPUももう既にミドルクラスの下ぐらいの性能レンジになってしまうぐらいに世の中のGPU性能がアップしているのですが、画面の解像度をフルHDぐらいに限定すればまだまだ遊べるタイトル数はかなりのものです。最新の、画面にものすごく凝ったゲーム以外であればたいていのモノは十分に動くはずです。
セットアップ
セットアップ、といっても大した作業がある訳でもありません。Radeon RX570をマザーボードの拡張スロットに挿すだけ。
装着できたらあとは通電して、ドライバの方はとりあえずはWindows 10が自動で持ってきてくれるものにまかせます。
が、ここで想定外の事態が発生。
Radeon RX570のドライバを導入して正式にビデオカード側の機能を有効化する前にもかかわらず、統合GPU側のビデオ回路がどうやら無効化されてしまったようです。
マザーボード側の映像出力端子から信号が出ていません。
止むなく液晶ディスプレイをビデオカード側の映像出力端子に繋ぎ直して普通に起動が完了しました。Radeon RX570側は問題なく動作しています。
想定外の影響
Radeon RX570を追加してもマザーボード側の映像出力が生きていたら、つまりは統合GPU側のビデオ回路が使用可能だったならいくつか試したいことの構想を練っていました。
一つはWindows 10で利用できる使用するGPUを手動で選択する機能のチェックです。統合GPUの映像出力を使いつつ演算処理は外部GPUで行なってもきちんと性能が出るのかどうか。

またもう一つはまず不可能ではあるだろう、と思いつつも、もし可能であればハイブリッドCrossfireが動かないかな、というものでした。
この二つは残念ながらRadeon RX570を追加した時点で、どうやらハードウェア的にマザーボード側の映像出力がキャンセルされてしまった時点で試すことができなくなりました。
AMDのAPUとRadeonの組み合わせでは、実はスイッチャブルグラフィクスの実現は難しいのかもしれません。
GPU性能のテスト
想定外はありましたがとりあえずはRadeon RX570側の性能のチェックを行ないます。今回もドラクエXベンチと3DMarkのTimespyベンチマークを実行しています。
テスト前に念のためにRadeon RX570のドライバはAMDのサイトから最新版を取ってきてインストールしてあります。
まずはドラクエXベンチ。
全く問題のない十分な性能が出ています。このタイトルは3Dものではありますが描画負荷はかなり軽いゲームですので、この程度のスコアが出るのは当然と言えば当然ではあります。

多分これ以上に高性能なビデオカードを使ったとしても大幅に高いスコアが出ることはないでしょう。恐らくほぼスコア的にはカンストしているものと思われます。
ただ、インテルのPentium G5400との組み合わせで計測したとき(19151ポイント)よりも誤差とは思えない差でスコアが下がっているのは気にかかるところです。
ただまあ、実用上は全く問題はありません。
3DMarkのほうではこんな数字が出ています。

CPUテストの方の数字がPentium G5400(2419ポイント)と比べると大幅に高いのは2コア4スレッド対応CPUと、リアル4コアCPUの差です。
有意な差と言えるかは微妙ではありますが、GPUテストの方でもRyzen 3 3200Gの方が良い結果を出しています(3807:3845)。描画テストを行なうにも各種処理の割り当てにはCPUが介在していますので、CPU性能の差がGPU性能を押し上げている可能性もあります。
消費電力の方はドラクエXベンチ実行時に150W程度。

3DMarkのTimespyのデモモード実行中に200W程度となっています。

低いとは言えない消費電力ではありますが、そこそこのパワーのビデオカードを載せている以上、この部分は諦めが必要ですね。
ちなみにアイドル時の消費電力は45Wほどです。こちらは十分に低い数字ですね。
CPU性能も再チェック
ちょっと思い立ってCPU性能を測るCINEBENCHも実行してみました。
Radeon RX570を取り付けるとRyzen 3 3200G側の映像出力自体がキャンセルになっていますので、統合GPUは完全に休止状態で一切描画負荷がかからなくなります。
CINEBENCH実行中の画面書き換えはほんのわずかでほとんど無負荷と言っていい状況ではあります。それでも完全に統合GPU側をシャットダウンできる状況ですから、TDPと消費電力枠が完全にCPUコア側に振り分けられるのではないか、と思ったのです。
結果は4スレッド実行時に1454ptの数字が出ました。

Fluid Motionももちろんイケます
Radeon RX570側にもAMD独自の動画再生支援機能Fluid Motionが搭載されています。Ryzen 3 3200Gの統合GPUで動画再生を行なう時と同様の設定でこちらも非常に滑らかな動画再生を楽しむことができます。
ちょっと面白いのはハードウェアの使い方がRadeon RX570とRyzen 3 3200Gの統合GPUとでは異なるところです。
Fluid Motionを使って動作の再生を行なっているとき、Ryzen 3 3200Gではビデオのエンコードエンジンが動いていましたが、Radeon RX570ではエンコードエンジンに負荷はかかっておらず、3Dエンジンとビデオデコーダーが動いているようです。

Radeon RX570とRyzen 3 3200Gの統合GPUはGPUの世代が異なりますので、内部のハードウェア構成jも違っているのだと思われます。
恐らくですが、Radeon RX570ではFluid Motionの機能は、GPUが3D演算処理を行なうシェーダーでプログラムを走らせることによって実現しているのでしょう。動画再生時の3Dエンジンにはそれなりの負荷がかかります。
ただ、消費電力の方はさほどでもなく、フルHD動画の再生で63W程度でした。

まとめ
Ryzen 3 3200Gで組んだシステムにRadeon RX570を追加してみましたが、動作結果の方は順当な、と言いますかまったく意外性がない当然の結果が出ただけのような形になりました。
想定外が起こらなくてつまらない、というのはPCマニア心理であって、一般的には何もせずともごくごく当たり前に安定して動くのが最良の結果でしょう。
Pentium G5400と比べるとCPUパワーがかなり上がっていますので、テストの条件によっては純粋な描画性能自体もそれなりに上がる可能性があるのですが、今回のレビューで行なったテストではほとんど有意な差は出なかった、と言った方がいいと思います。
消費電力が増えるのはどうしようもありませんが、Ryzen 3 3200G側はCPUのタスクに集中できますから、最新のゲームによくあるパターンのCPUでも各種シミュレーションをガンガン走らせるようなタイトルではゲームプレイ自体が快適になる可能性は高まります。
マイニングバブル崩壊直後のRadeon RX570のバーゲンセール状態はなくなってしまったためコスト面の旨みは減っていますが、それでもコストパフォーマンス面の魅力はまだ大きいです。
統合GPUからのアップグレードパスとして、コストを優先したいときには考慮しても良いビデオカードだと思います。
ちょっと残念だったのは、統合GPUと自由に切り替えながら使えるスイッチャブルグラフィクスの実現が出来なかったところ。ここはAMDなどにドライバ等々を頑張っていただきたいですね。