PCケースのトレンド
パソコンの筐体、ケースと言えばかつて重視されてきたのは、エアフローか静音性がほぼすべて。この二つは少し背反する部分を持つPCケースの性能ですが、ほとんどのPCケースはこの二つのどちらを重視するかで製品の性格を決めていた感じです。
そこにここ数年?5年ぐらいかな??また一つ別の要素が加わった気がします。
その流れは「魅せPC」とでも言うといいでしょうか。PCケースの中身をあえて見せるような組み上げ方をするパソコンです。
ただ元々そちらに近い流れもあったと言えばあった気もします。例えば初期の水冷システムなんかだと、外付けラジエーターのタワーを派手で見栄えのする作りにするとか。あとはケースの外側などの電飾的なものもありましたよね。
その流れをさらに強くして内部の配線などを非常にキレイにまとめ、ケースファンやCPUファンをライトアップ、ケースのサイドパネルに透明なアクリルや強化ガラスを使ってキレイな中身を見せるタイプのパソコンを組む人が増えてきました。
今回チョイスしたThermaltake VIEW 37もその流れに乗った製品だと思います。
ただちょっとこのケースが特徴的なのは天面まで透明なアクリル板にしたこと。デスクトップパソコンと言いつつ、日本ではその大きさからデスク「サイド」パソコンとして使われるケースが多いと思いますので、そういった設置の仕方でも内部のキレイさを見せられる作りになっています。
今回このケースを入手して、サイトオーナーのKenu氏とあれこれトライしているマシンを組み込んでみました。
さまざまな使い勝手等々をレポートします。
でかい
Thermaltake VIEW 37はミドルタワーケース、という名目で製造販売されている製品です。が、手元に届いてみるとこれがでかい。

そもそもフルサイズのATX規格のマザーボードをさらに超えるサイズのE-ATX規格に対応可能なサイズを持つケースなので、ミドルタワーを名乗らせるのはどうなの?という疑問もありますね。
さらにこのケースを大柄にしているのは裏面配線を楽に可能にするためのスペースを十分確保したことが原因で、その分かなり幅が大きくなっています。

さらに内部にある程度しっかりした水冷システムのラジエーターを配置可能にしたことで、3.5インチや5インチのベイのスペースを一部潰しているにもかかわらず前後方向の奥行きもかなり大きくなっています。
こういったカタチなので、内容積は古い基準で作られたフルタワーケースを超えるぐらいのものがありそうです。わたしがずーっと使い続けてきたクーラーマスターの初代COSMOSより多分大きい。
普通に立てて使う分には設置面積自体はさほど無茶な感じにはなりませんが、ギリギリの設置をしているときにはちょっとちょっと注意が必要かもしれません。
こちらのケースは今回はAmazonで発注しました。マーケットプレイスの扱いで販売店はソフマップ。税込み9,608円でした。
ちなみにケース自体の重さはサイズの割には軽量です。扱いは楽ですね。透明なパネルが強化ガラスではなくアクリルなのがすごく効いているはずです。
と思って念のためメーカーのサイトでスペックを確認したのですが、ケースのみで11.8kgもあるんですね。サイズが巨大なせいか実際に抱えてみるとさほど重いとは感じないのですが。
でかいのでいろいろ楽
PCケースのサイズが大きいのは設置面積の点を除けば、だいたいはメリットばっかりではあるんですよね、実は。
中の空気の量が多くかつ空気が流れやすいので、特に冷却面では圧倒的に有利になります。また、いろいろスペースに余裕があるのでパーツ組み込みもすごく楽ちんです。
もちろんたくさんの拡張ボード、水冷システムなども組み込めますね。カード長の長いウルトラハイエンドのビデオカードも大丈夫でしょう。
今回使っているマザーボードがマイクロATXのせいもありますが、パーツを組み込んでも中はスカスカ状態。

設置もとても楽でした。
各種パーツ取り付けのためのネジもとてもたくさん付属していますので、万が一のネジ紛失でも通常は大丈夫。気楽です。
ただケースのパネル固定用など、一見指でも回せそうな作りになっているネジがかなり堅く、サイドパネル取り外しなどの際には基本ドライバーは必須です。
背面配線用のホール、スペースも十分で問題なく配線できそうなのですが、今回のパーツの組み合わせだと電源ユニットとマザーボードのATX電源のコネクタの配置が遠く、電源ケーブルは背面配線できませんでした。ここは電源に付属するケーブルの長さとの相談が必須です。
十分なエアフロー
Thermaltake VIEW 37は正面の濃いグレーがかったアクリルパネルがはめ殺しでスリットもありません。このため前面からの吸気はサイド側にあるあまり大きくはないスリットから、というカタチです。
そのため前面の3.5インチベイの前に付けられているファンは飾りで機能的には死んでいると思ったのですが、思いの外、後ろに風は流れます。ただ位置的にサイドに設けられたスリットからの吸気にはあまり貢献しなさそうな雰囲気。

なので、どちらかと言えば3.5インチベイ冷却が目的で、吸気用のファンとは考えない方がいいかもしれません。
ですがこのケースはいわゆる「窒息ケース」という感じではなくて、背面の14cmファンがかなりいい仕事をしています。一般的なシステムで使うには十分なエアフローがありそうです。
幅が大きくなってしまっているケースですが、そのおかげで無理をしなくても風量の多い14cmファンが使えているのがいろいろなところでプラスに働いている感じですね。
標準で付属するファンだけでも十分なエアフローが確保できていますし音もとても静かです。静かさには前面にスリットを作らなかったことも上手く働いていそうです。
十分な拡張性
Thermaltake VIEW 37では一見3.5インチベイの数がちょっと不足に見えます。ワンタッチで取り外しが可能なアダプタのついたベイが3つしかありません。

ですがまさにシャドーベイといった趣の3.5インチドライブ搭載場所が、裏面配線用のスペースに設けられています。これと合わせて最大合計で7台の3.5インチドライブを搭載できます。

ただ、裏面配線用のスペースにはファンの風が当たりません。一部のドライブ設置用スペースの裏には通風口が開いてはいますが、発熱が大きい高性能なハードディスクの設置には適していないと思います。ハードディスクはフロントファンの風が直接当たる通常の3.5インチベイに搭載するのがいいでしょう。
SATA3接続のSSDなど、発熱が穏やかなデバイスは裏面配線用のスペースを有効活用すると良さそう。2.5型ハードディスクのカタチのドライブなら、最大6基も搭載できます。
このほか、底面とフロントに吸気ファンの追加も可能ですから、高発熱の空冷システムにも十分に対応できそうです。
お手入れには「覚悟」が必要
このケースは半分「魅せる」ためのケースでもありますからしっかりとお掃除もやりたいところ。ですが、そのお掃除には少し覚悟、といいますか気合いが必要になります。

フロントパネルとサイドからトップにかけてのパネルはアクリル製ですので、静電気を持ちやすくホコリがつきやすいです。また、透明なパネルですから、裏面もしっかりキレイにしないといけません。指紋も目立ちますね。
なのでお掃除は結構気合いを入れてやらないとなりません。
あと強化ガラスと違ってアクリルは硬度が低いので比較的簡単に擦り傷がつきます。通常はホコリを取るときには拭くのではなくエアーダスターで飛ばす方がいいと思います。
また拭き掃除の時にはクリーニングクロスではなく柔らかいティッシュペーパーがオススメかも。
クリーニングクロスも悪くはないのですが、前回ほこりを拭き取った後、洗濯とかせずにそのまま使うと前回拭き取ったほこりがクロスに残っていて、それが次回のお掃除の時に擦り傷を作る最大の原因になります。
使いすてのウェットティッシュ的なクリーニング用品がいいかもしれませんね。
それと多分、どんなに大切に扱っても擦り傷はつきますから、ずっと完璧な状態で使い続ける、というのを最初からあきらめるのがコツなのかもしれません。
結論。大きさが許容できればとてもいいケース
Thermaltake VIEW 37はミドルタワーケースと呼ぶにはちょっと抵抗がありそうなぐらいのボリュームを持つケースです。
その分、内蔵できるデバイスも多く、内容積が大きい関係で冷却にも余裕がありそうです。ファンの追加で高性能・高発熱なシステムにも十分対応できると思います。
また、サイドパネルだけでなく天面までアクリルパネルを回り込ませて中が見えるようにしたことで、組み込んだパーツの美しさも見られる面白いケースになっていると思います。
実際、ハイエンドのCPUクーラーなんかは結構キレイで、金属オタクの心を刺激してくれるガジェットだったりもしますしね。たまたまですが、今使っている総金属製の美しいCPUファンとのマッチングは最高だったかもしれません。
加えてこのケースは標準品でもファンの周囲が青色LEDで光ります。夜、部屋の明かりを落としてこのLEDの明かりでマザーボードやヒートシンクを見ると、なかなかいい雰囲気でした。
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標準のファン2つの状態なら音もとても静かですし、実用性も十分に高い良いケースだと思います。