はじめに
もし1万円の予算で手持ちのパソコンのアップグレードを考えるならば、わたしが真っ先にオススメしたいのはシステムドライブのSSD化です。
お手元のパソコンのドライブがまだハードディスクだったらこれをSSD化することで、ものすごく大きな使い勝手のアップデートを狙えます。
特に今はすごくいいチャンスです。全世界的なスマートフォンの失速を受けてフラッシュメモリのコストが暴落に近いような値下がり状況になっているんです。この影響でうれしいことにSSDやSDカード、USBメモリがすごく安く買いやすい状況が生まれています。
おかげで内蔵ストレージのSSD化でも最高のコスパが狙えます。タイミング的にも今ストレージのSSD化をするのは絶対のオススメです。
このわたしなりのセオリーとSSDの購入しやすさに乗っかるカタチで、今回わたしはこちらのサイトで何回かレポートしているエントリー構成のマシンのシステムドライブをWDの高性能SSD、WD Blackにアップグレード。
パソコン自体の使い勝手の大幅なアップデートを図ってみることにしました。

この「1万円アップグレード」によってマシンは極上の使い勝手に「激変」したのですが、その中身をもうちょっと突っ込んで詳しくレポートします。
WDの高性能SSD、WD Black SN750 NVMe SSD
WDことWestern Digitalはご存じの通りハードディスクのメジャーメーカーです。このメーカーも今のSSD人気や需要の高まりを受けてSSDの製品化にも乗り出しています。
カメラユーザーなどはWDがフラッシュメモリ系メディアに強みを持つサンディスクを買収したことでも印象に残っていることでしょう。
このためWDのSSDには2つのブランドがあるのですが、今回はWD側の昔からのブランドでその中でも高性能ラインにあたる「WD Black」シリーズのSSDをチョイス。

今だと1万円の予算なら、他社製品でも高性能ラインのSSDで250GBクラスが狙えます。
このSSDのスペックはこんな感じです。
シーケンシャルリード 3,100MB/sec
シーケンシャルライト 1,600MB/sec
ランダムリード 22万IOPS
ランダムライト 18万IOPS
IOPSはI/O Per Secondのことで、最大毎秒何回入出力処理が行えるかの性能を示しています。
SATA3接続のSSDでは、シーケンシャルアクセスのデータの転送速度はだいたい550MB/secで頭打ちになります。WD BlackのようなPCI-Express接続でNVMe対応のSSDはこれをはるかに凌駕する速度が出るわけですね。
Windows自体やアプリ操作の体感速度と相関性が高いのは小さなファイルのランダムアクセスの性能です。NVMe対応のSSDはこの性能も非常に高いので、OS起動などがまさに爆速になります。
ちなみに今回SSDはAmazonで購入。お値段は8,409円(税込み)でした。
SSDの接続
今回選択したWD Black SSDはM.2タイプ。比較的最近のマザーボードに追加されたほぼSSD専用の拡張スロットを使います。
接続はとても簡単でスロットにSSDを差し込んだ後、SSDのM.2スロットのコネクタとは反対側をネジで軽く押えるだけ。

スロットへの差し込みも堅くはないので、メインメモリを押し込むときのような気持ち悪さはほとんどないと思います。
あとはマザーボード、SSD側に不具合がなければ自動的にUEFIがドライブとして認識してくれます。ハードウェアのインストールはとても楽ちんです。
SSD化した後の使用感
今回は新しくつないだSSDにWindows 10をクリーンインストールしてみました。その方がドライバなどのソフトウェアがキレイな状態になって、動作の安定感の向上などが狙えるからです。
Windows 7や8.1からアップグレードしたWindows 10搭載機の動作が不安定になる原因の一つは、古いOS時代のドライバがそのまま残ってWindows 10でも使い続けられることにあります。
クリーンインストールすればこういった無用なトラブルの原因を最初から排除できます。
そしてまずは、このOSのクリーンインストールを行なう時からSSDの桁違いの性能を体感できますね。Windows 10のインストール媒体がUSBメモリになっていることも大きいのですが、たったの15分程度でOSのインストールが終わってしまいます。
こちらもとても楽ですね。
1からマシンを組んだとしても、OSを入れて動作を始めるまで慣れた人なら30分でできちゃうかもしれません。
Windows 10の最初の起動後にWindows Updateをかけてさらにアプリも更新。このあと電源を落とし起動し直してみると、またその「爆速」っぷりにも驚きました。電源スイッチを押してからたったの数秒でWindows 10のサインイン画面が立ち上がってくるのですよ。
これは今回使ったマシンに最低限の周辺機器しかぶら下がっていないことも影響していますが、それにしても速い。メーカー製の起動処理の内容を最適化したPCにも全く引けを取りませんね。
システムドライブがHDDのマシンとはまさに雲泥の差です。
システムドライブがハードディスクのPCのアップグレードを行なうならCPUに3万円の予算を使うより、システムドライブをSSD化した方が1/3の予算で何十倍もの操作感のアップが実現できます。
絶対のオススメですよ。
ベンチマーク
各種ドライブのベンチマークと言えば定番中の定番がCrystalDiskMark。このアプリを使ってWD Blackの性能を今回使っているマシンで測定してみました。
今、CrystalDiskMarkもストアアプリ化されていますので、今回の性能測定ではUWPアプリ版の方を使っています。
その性能測定の結果がこちら。

シーケンシャルリード/ライトの性能がメーカーの公称値に達していませんが、これは今回使っているマシンのマザーボード側の制限です。
チップセットがH310ですのでPCI-Expressスロットがバージョン2.0までの対応になっている影響です。PCIe2.0スロットは3.0対応スロットの半分の転送速度が限界です。
理論的にはPCIe2.0のx4接続で2,000MB/secが上限になるはずですから、リードでその9割以上を使い切れているのはむしろかなりの好成績と言えると思います。
ランダムリードはメーカー公称値にかなり近い205,000IPS程度に達していて、ここがOSやアプリの非常に良好な使い勝手につながっています。
ちなみに手元のSATA3接続のSSDはこれぐらいの性能です。

特にシーケンシャルアクセスのスピードが段違いですね。
ハードディスクだとこれぐらい。

小さなファイルのランダムアクセス性能が本当に桁違いです。SSDの性能を見た後にHDDのそれを目にすると逆にあまりの遅さに驚くかも。
WD Blackは高速タイプのSSDとしては発熱が控えめなようです。CrystalDiskMark実行中に触れてみましたが、熱は持っているものの「指で触れられる温度」に収まっていました。コントローラチップのコアはもっと温度は高いはずではありますが。
M.2タイプのSSDはケース内のエアフローで冷やしにくいカタチ・設置方法になっていますので、これはうれしいフィーチャーです。
結論。手元のパソコンアップグレードの最優先事項にすべし!
タイトルでも書いていますが、わたし個人としてはパソコンの性能をアップグレードしようと思ったときには、システムドライブのSSD化を真っ先に推したいと思います。
システムドライブがHDDのマシンならば、他のパーツ交換よりもずっと高い費用対効果を実現できるチョイスになります。
今のフラッシュメモリ系パーツがとても安くなっている状況ならば、NVMe対応の超高速SSDのうち高性能版なら250GBクラス、廉価版なら500GBクラスのSSDが1万円の予算でターゲットに入ります。
恐らく一度経験してしまったら二度とHDDには戻れないレベルの快適さが手に入りますよ。
SSDで使われているフラッシュメモリの寿命を心配する方もいるかもしれませんが、わたしの個人的な体験レベルではHDDのほうがSSDよりもずっとよく壊れます。
Windows 10なら自動でSSDはデフラグしない設定も行ってくれますので、無駄な寿命の短縮に繋がる動作は起こりにくくなっています。一般的な使い方ならばトラブルがない限り、SSDの寿命を心配する必要はないと思います。
出来るだけ多くのユーザーにSSDの超快適さを味わって欲しいですね。
今回のマシンの1万円アップグレードはノートラブルの一発移行で最上の使い勝手が手に入り、まさに大成功でした。