はじめに
今回Kenu氏の依頼を受けて、ローエンドと言っていいPCのコアとなるパーツを使って1台マシンを組んでみました。
そんな中でわたしたちが選んだCPUはPentium Goldシリーズ。今のインテルCPUのメインストリーム、Coreプロセッサと同じコアを採用しつつすごくお手頃な価格を実現した製品です。
今はインテルの製品供給のトラブルがあってこのCPUは自作パーツ市場にモノがほとんど出回っていないのですが、製品が順調に世に出てくれば恐らく「たったの」6千円台で購入できるはずのお手軽製品ですね。
しかもこの製品、バルク仕様のようなCPUダイ単体の販売というわけじゃなく、きちんとしたリテールのCPUクーラーがついてくるんですよ。その時点で既にコスパの高さには恐れ入ります。
そんなすごくお手頃価格のCPUがどんな性能を発揮してくれるのか、この記事ではそのあたりに少し詳しく突っ込んで見ていきます。
パッケージと内容物
冒頭でも書いたのですが、今、インテルCPUは非常事態に近いレベルで供給量が足りない状況が続いています。そういった状況だとメーカーパソコン向けの出荷が優先されてしまうので、自作市場にはますますモノがない状況になってしまいます。
今回最新世代のPentium Goldを試してみよう、と思ったのですが、現行世代のG5000シリーズの新品が全く出回っていません。モノがあってもプレミアム価格がついていて、下手するとCore i5ぐらいが買えそうなお値段になってしまってます。
なので仕方なく今回わたしは中古のPentium G5400を買いました。動作クロックが数bin低めで最新のものではないのですが、CPUの素性の方はしっかり見られるはず、という読みで。
パッケージは今風のインテルCPUのセオリー通りですね。

同梱されているCPUヒートシンクは薄型のトップフロータイプ。ファンも8cm径のもので冷却能力は特別に高そうなものではないですね。ですが、Pentium G5400はTDPが58Wと小さめのため、これでも十分との判断でしょう。

CPUのヒートスプレッダとの間の熱インタフェースになるシリコングリスは、ヒートシンク側に既に塗り付けてあるタイプです。CPUやヒートシンクを設置後、少し稼働させるとCPUの発熱で溶けて勝手に広がってくれる便利なものです。扱いをミスって手を汚すこともないですし。
ヒートシンクは背も低いので、スリムケースなどにも使いやすいカタチだと思います。
Pentium G5400のスペック
Pentium G5400のスペックを見ておきます。
Pentium G5400は第8世代のCoreプロセッサと同世代のCPUコア、GPUコアを採用したCPUです。パソコン用CPUとしてのポテンシャルはかなり高い所にあると言っていいでしょう。
Pentium G5400はそのコアを2つ持っていてハイパースレッディングにも対応します。2コア4スレッド対応のCPUとなっているわけですね。
動作クロックは3.7GHzですがターボブーストは無効化されています。低負荷時には800MHzまでクロックが落ちて消費電力と発熱を抑えるEISTが組み込まれています。
CPUの発熱や消費電力のレベルの目安になるTDPは58W。
統合されているGPUはIntel UHD Graphics 610で、3D演算用ユニット、インテルが言うところのEU数は12基です。SP数に換算すると96個相当の回路規模・演算能力を持っています。
GPU側の動作クロックは最低350MHz、最大1.05GHzで動作できる作りです。
4K解像度の表示を正式にサポートしたので「UHDグラフィクス」にリネームされています。
全体的な使用感
今はパソコンの総合性能は並列処理能力を高めることで引き上げる流れになっています。CPUを製造するプロセスはどんどん微細化しているんですが、それを持ってしてもCPUの動作クロックを引き上げるのがとても難しくなっているのです。
このためより具体的には、コアを複数持たせて同時に並列実行できるプログラムの数を増やすことでトータルの処理性能を引き上げるというのが今のCPUのトレンドです。
なので2コアのCPUというのは、特にデスクトップパソコンではローエンドといいって言い時代になっていると言うわけです。
Pentium G5400はまさにこのローエンドのCPUで、そこそこ高い動作クロックを持っていますが物理的にコアは2個しかない、そこが使用感にどんな影響を及ぼすかそのあたりがちょっと面白そうなCPUです。

そして実際にマシンを組んでWindows 10を動かしてあれこれ使ってみたわけですが、これが予想以上に快適。ほとんどのシーンで操作感はサクサク。ストレスを感じるタイミングがほとんどありません。
もう少し具体的には、Windows 10自体の操作に引っかかりを感じる箇所がほとんどないこと。Webブラウザでネットの巡回をしたりネット動画を見たりするときにも動作が滑らかなこと。
さらに文書作成でよくお世話になるはずのマイクロソフトオフィスの各種アプリの操作感がとてもいいこと、といったあたりは特筆してもいいと思います。つまりは一般的なパソコンの使い方のそれなりの割合の部分で操作感に不満を感じることはまずない、と言えると思います。
この使いごこちの良さには正直なところかなり驚きました。
統合GPUも今ではミニマムな性能のものですが、一般的な使い途には全く何も問題がないレベルの実性能があります。一部の重たいソフトを動かさない限りは全く何も気になる所はない感じですね。
そういったヘビーなソフトを使うユーザー以外、どうやら今はこのクラスのマシンの性能で普通の用途は十分まかない切れる時代になっているらしい、ということが言えそうです。
より詳細な性能
今度はもっと詳細にCPUの性能を見てみることにします。
純粋なCPUの演算性能を見るためのベンチマークソフトの定番中の定番が「CINEBENCH」です。これはすごくリアルな3D CGを作る方法の「レイトレーシング」というアルゴリズムで1枚のCGを描く性能を測るもの。
これをシングルコアだけ使うカタチで実行してみました。
結果は「334cb」で、Core i7-3930Kを3.8GHzにOCしたマシンで実行した結果265cbよりも2割以上高い数字を叩き出しました。さすがにこれにはわたしもちょっと驚きました。
動作クロックで上回っているCore i7-3930Kを、CPUアーキテクチャなどの改善による性能改善でこれほど大きく上回った、という意味になるわけなので。
一応、4スレッドでも性能を測定してみたがそちらの数字は831cb。ハイパースレッディング分の性能アップもそこそこある感じになっています。

Pentium G5400には実コアが2個しかないので、コアを全部フル活用するようなタイプの重たい処理では高い総合性能を出すのはちょっと難しいところ。
ですので、本当の意味で高い演算性能が必要な用途にはやはり適しているとは言いにくい感じですね。
発熱・消費電力の具合
インテルCPU向けにインテル自身がCPUや統合されたGPUの動作クロック、温度、さらに消費電力までモニターできるツールをリリースしてくれています。
インテルPower Gadgetってアプリなんですが、今回はさまざまな用途でPentium G5400を動かしているときにこのツールを使ってCPUの温度などをザッとチェックしてみました。
その様子を見る限りPentium G5400はかなり低消費電力で発熱も控えめなチップであることが見えてきます。

CPUにも統合GPUにもある程度負荷がかかるようなベンチマークを実行中でも、消費電力がTDP枠の上限に迫ることがありません。本当にどちらにもフルロードをかけるようなプログラムが走らない限りTDPの58Wという枠を使い切ることはなさそうです。
ドラクエXベンチ実行中にCPUもGPUも動作クロックが最大まで振れている状態でも、CPUコアの温度は40度ちょっとに留まります。CPU側がフル回転するCINEBENCHを4スレッド実行したときにも51度ほど。薄型のヒートシンクであっても十分に冷やせていることが確認できました。
こちらの点でもかなり優秀なパッケージと言っていいのではないかと思います。
ヒートシンクのサイズが小さめでファンも8cmファン。大口径のファンに比べると送風量には弱点があります。そのためファンの回転数は高めに保たれているはずですが、その騒音はさほど大きなものではないですね。ケースのサイドパネルを閉じてしまえばまずCPUファンの音が気になることはないでしょう。
結論。コスパ抜群
Pentium G5400が潤沢に市場に出回るようになれば、という条件はつくのですが、トータルで見たこのCPUのコストパフォーマンスはやっぱり抜群です。これだけの性能を持ったCPUが6,000円台で手に入れられる可能性があるって言うのはかなりすごいことです。
若干プレミアのついた中古価格の9,000円程度で考えても決して悪くないと思います。
これがバルク品で純正ヒートシンクは付属しない、といったパターンなら分らなくもないですが、きちんと冷やしきれるヒートシンクもしっかり付属した上でのこのお値段はすごいです。
ストレージに今すごく安くなっているSSDを使えば、一般的な使い方なら十分にメインマシンとしても活躍できる1台を作れそう。サブマシンを安く組みたい場合にも安心しておススメできるパーツですね
本当にそのコスパの高さにはビックリします。