マザーボード

シンプルながら十分な拡張性。ASRockのマザボH310CM-HDV/M.2

はじめに

今風のエントリークラスのマシンを組むために今回わたしたちがチョイスしたマザーボードはASRockのH310CM-HDV/M.2です。

使われているのは現行世代のCoreプロセッサに対応するチップセットの中ではローエンドになるH310。上位のチップセットに迫る機能を持っていて、普段使いのマシンには十分な内容といえます。

ただちょっと気になるところがあるとしたら、PCI-Expressインタフェースの世代がバージョン2.0に抑えられているところでしょうか。チップの機能として欠けている訳ではなく、上位チップとの差別化のために機能をロックされているだけの気もしないでもないですが。

ただ、この部分が性能に影響を及ぼすケースもあるため、さまざまな場所で最高の性能を必要とするときにはちょっと注意しておきたいところ。

今回テストする範囲ではここが影響する部分はないのですが、将来的にマシンを拡張するときには性能面のネックになる可能性があります。ここは最初に備忘録的に記録しておくとにしましょう。

ではこのマザーボードの内容をより具体的に見ていきます。

今回レビューに使っているPCもKenu氏から依頼・提供を受けたマシンです。

スペック

まずは今回使ったマザーボードASRockのH310CM-HDV/M.2のスペックをまとめておきます。

チップセットはH310で、対応するのはインテルの第8世代、第9世代のCoreプロセッサと、それと同じコアを持つPentiumやCeleronシリーズです。

メモリはDDR4 2666までに対応する2スロット、拡張スロットはPCIe 3.0×16を1本、PCIe2.0x1を2本備えています。

H310側のPCIeがバージョン2.0対応で最大6レーンまでしか引き出せないのに、この拡張スロットの仕様はちょっぴり不思議ですね。恐らくPCIeのブリッジチップをかませて拡張しているのではないかと思います。

SATA3のコネクタは4つ。PCIe 2.0 x4とSATA3にも対応するM.2スロットをひとつ搭載しています。

USBはバージョン3.1のGen1対応のコネクタが背面に2つあり、フロントパネル用のピンヘッダを2コネクタ分マザーボード上に搭載していてこちらの面の拡張性も十分です。

有線LANポートはギガビット対応でうれしいことにIntelのNICを使っています。通信の安定性確保にはちょっとチェックしておきたいポイントです。

ちょっと注意した方がいいかもしれないのは映像出力端子。

シングルリンクのDVIとD-Sub、HDMI端子を1つずつ搭載しているのですが、WUXGA解像度(1920×1200ドット)を超える解像度のディスプレイをつなげるのはHDMI端子だけになるはずです。

DVI端子がデュアルリンク対応ではないところ、DisplayPort端子を持たない所は気にしておいた方が良さそうです。

ただ、最近のパソコン用ディスプレイの映像入力端子はHDMI2.0などに移行しつつある感じもあるので、新しいディスプレイであれば接続で問題になることは少ないでしょう。

ちょっと古めのWQHD解像度のディスプレイなんかは要注意かもしれません。

あとHDMI接続で高解像度のディスプレイを使うときには、ケーブルの方も新しいバージョンに対応している必要がある点には要注意。4K60p表示を行なうなら最低HDMI2.0対応のケーブルが必須になることを頭の隅にでも置いておきましょう。

UEFI

マザーボードのコントロール用のファームウェアがかつてのBIOSからUEFIに切り替わって使い勝手はかなり良くなりました。キーボードだけのコントロールではなく、標準ドライバで動かせるマウスでの操作も可能になりましたから。

これに合わせて各メーカーが独自のUIをもつ凝った画面を作り込むようになっています。見ていて分りやすいしキレイで楽しい画面に変化しています。

ただ、画面構成がメーカーごとにバラバラになったので、新しいマザーボードを使い始めるときにはちょっとだけ戸惑いがあるかもしれませんね。この辺りは画面構成が似たり寄ったりだったBIOS時代の方がわかりやすい部分はあったかも。

ですがどのみちマザーボード側で変更する項目は基本どのマシンも共通です。パソコン自作に慣れたユーザーならちょっと画面をあちこち行き来するだけですぐに使えるようになると思います。

ちなみに今回いじった設定は今のところメモリ関連だけ。

OCメモリでXMPプロファイルを使えばDDR4 2400での動作が可能になるメモリモジュールだったので、メモリの設定をSPDからXMPに切り替えています。

初期設定のまま利用するのであればUEFIの画面を開く必要はそもそもないと思います。実際、今回もメモリ設定をSPDのままで使うならば、UEFIを開く必要は一切ありませんでした。

すごくシンプル

映像出力をCPUに統合されているGPUに任せている関係もあって、組んでみた際のケース内はすごくシンプルに仕上がっています。

マザーボードと繋がっているケーブルは電源が2つ。ストレージに繋がるSATAケーブルが1本。ケースの電源スイッチ、リセットスイッチとHDDのインジケータだけ。

もしケースにある前面のオーディオ入出力端子を利用しようと思ったらHDオーディオのケーブルの接続を追加。やはりケース側のUSBコネクタを使うならばUSBピンヘッダのコネクタを接続すればOKです。

ほとんどの機能がオンボード・バックパネルのコネクタで完結するので、マザーボードとそれ以外のデバイスを接続するケーブル自体がとても少なくて済むというわけですね。

パソコンを自作する、っていうとすごく大変なイメージを持っている人も多いと思いますが、実際の配線作業は実は大したことはなかったりします。

「パソコン自作はガンプラ組むよりずっと楽」というのは友人の弁ですが、まさにその通りだとわたしも思います。

またコネクタの接続に関しては、電源、USBのピンヘッダ、HDオーディオなどはケーブルのカタチ、向きが別々の指定になっていて決して繋ぎ間違いをしない作りになっています。

このため、初めての自作でもじっくり取り組めば確実に組み上げられるようになっていのですよね。

それでも配線自体の数を減らすために、初めての自作ならこういったシンプルなマザーボードとCPUの組み合わせから始めるのがオススメです。

まとめ。シンプルで組みやすい佳作

今回ASRockのマザボH310CM-HDV/M.2を使って一台組んでみて一番強く感じたのはそのシンプルさです。

配線の数も少なくて組みやすく、仕上がったマシンのケースの中身もスッキリしていてキレイ。これならばケース内のエアフロー云々で困ることもないでしょう。

もっとも今回のように統合GPUを使ってビデオ出力を行なうケースならば、熱の問題で苦労するってこと自体がまずないでしょうけれど。

H310CM-HDV/M.2はx16のPCI-Expressスロットを1基備えていますから、本格的なビデオカードの増設にも対応できます。ですから今は必要がなかったとしても将来的な拡張の際の熱問題への対処のしやすさはひとつメリットになり得ます。

自作に挑戦したいユーザーにとってもこのシンプルさは作業のハードルをうんと下げてくれるいいファクターでしょう。CPUのソケットだけは非常に繊細で扱いには注意すべきですが、それ以外については間違えそうなポイントは意外なほど少ないのです。

自作未体験のユーザーにもぜひ一度は自分でマシンを組むことにチャレンジしてもらいたいところですね。

また、サブに1台サクッと組みたいってユーザーにもこの組み合わせは最適解のひとつになりそう。慣れているユーザーなら組み立て開始から20分程度でOSのインストールを開始できるんじゃないかと思います。それぐらい楽ですよ。

ASRockというと、他のメーカーにはない独特のフィーチャーをマザボに持ち込んだ「変態マザー」を製造販売するイメージがあったのですが、今回使ったH310CM-HDV/M.2はとてもシンプル&オーソドックスな作りでした。

誰にも安心してお勧めできる扱いやすいマザボです。